映像都市研究会

研究会期間

2007年4月~2008年3月

研究会の目的

本プロジェクトは、研究上の映像情報資源の統合・共有化と深く関係するものであり、社会学者、人類学者、歴史学者、地理学者、情報学者、地域研究者などによる学際的共同研究による次の4つの研究プロジェクトを柱としている。(1)従来の映像情報地理学・歴史学における都市に関する映像アーカイブス、(2)映画やテレビなどの民衆文化における映像メディアでの都市表象の研究、(3)広告など商業映像メディアによる都市イメージ産出の研究、(4)映像人類学・社会学・地域研究分野における都市を対象とした映像作品制作などに関する研究。本プロジェクトは、通常別々の学問分野で別個に扱われる①から④における都市映像を、統合的に発信・共有化することにより、都市を「立体的」に情報化するための「理想的」な映像アーカイブスのモデル提示を最終目的としている。

研究会の記録(2007年度) 記録:新井一寛

第1回「研究会の活動方針、および英国王立映像人類学映画祭の視察報告」

2007年7月10日 16:00~18:00 /場所:大阪市立大学杉本キャンパス文学部棟251室/概要:研究会の趣旨説明(新井一寛)ほか

本研究会では、本プロジェクトの今後の活動方針について討議した。また、英国王立映像人類学映画祭において、作品上映およびパネル参加を行った川瀬氏と、同映画祭を視察した石田氏から、それぞれの成果について報告があった。

第2回「『個人による記録』のデジタルアーカイブ=AHA!について」

2007年8月27日 13:00~17:00 /場所:大阪市立大学文化交流センター 小セミナー室/

本研究会では、NPO法人remoで活動を行っている松本氏による発表が行われた。氏らの活動は、大阪市の特定地域の家宅を訪問し入手したホームビデオの映像素材を活用して、特定地域の歴史的な地理的心象風景を映像作品として再現するものであった。この活動は、従来の研究上における調査者(撮影者)-被調査者(被撮影者)という関係性を解体し新たな映像実践の可能性を提示した点と、歴史学における民衆社会史研究に通じるものとして、参加者に注目された。また、氏らは、当該地域住民を対象として、その映像作品の上映会を開催することにより、地域コミュニティを活性化させる試みも行っていた。 /映像社会学研究会と合同で開催

第3回「映像実践のコミュニケーションにおける人類学的探求」2007年10月13日

発表・上映をもとに、映像の撮影・編集・上映などの映像実践に関わる調査者‐被調査者‐鑑賞者のコミュニケーションのありかたを広く議論した。また、映像都市研究における映像人類学的実践の方法論と意義、その学問的かつ倫理的問題点について議論を行った。

第4回「シンポジウムに向けた打ち合わせ」2007年12月1日

3月に開催を予定しているシンポジウムについての打ち合わせを行った。

 
     
第5回「映像ジャンルと都市表象」2008年1月18日

2本の社会派ドキュメンタリーに加えて、サウンド・スケープ的手法を用いた実験的作品を鑑賞することを通じて都市表象について考えた。特に、社会派ドキュメンタリー、ヴィジュアル・サウンド・スケープ、劇映画、それぞれ異なる「ジャンル」に分けられる映像作品での都市表象について考察した。上映後の総合討論では、これらの「ジャンル」に加えて、テレビドラマや広告など他のビジュアル・イメージにおける都市表象も視野に入れ、映像を通じた都市表象についての包括的な議論を行った。さらに、こうした議論を通じて、今後都市研究において、研究者によるどのような映像作品制作の可能性がありえるのかについても議論を行った。