大阪市史編纂資料

大阪公立大学にある「大阪市史編纂資料」は、明治後期から大阪市が進めた市史編さん事業に際して大阪市史編纂掛が調査・収集した資料の一部である。大阪市史編纂関係の資料の大部分は、大阪市立中央図書館・大阪市史編纂所に収蔵されているが、大阪公大「大阪市史編纂資料」は経済史関係の資料で、1935年から1938年に、大阪市役所から旧大阪商科大学に置かれた大阪市経済研究所に寄贈・移管されたものである。1~418の通し番号が振られているが、うち85タイトルは現物はなく、また別に番号なし29タイトルがあり、総点数は362点である。
大阪市史の刊行事業は、1911年~1915年に『大阪市史』全5巻7冊1帙が刊行され、次いで明治期・大正期を扱う『明治大正大阪市史』の編纂事業が1927年に開始され、1933~1935年の間に全8巻が刊行された。大阪公大「大阪市史編纂資料」は『明治大正大阪市史』の編纂にあたって参照された資料群である。
資料には、株式会社の設立や重要物産同業組合の簿冊が多く含まれ、府立大阪博物場(1875~1914年)や大阪府立商品陳列所(1890~1930年)の簿冊もあり、これらは元は大阪府庁で作成され保管されてきたものである。大阪府立公文書館所蔵の資料と比べると、大阪公大「大阪市史編纂資料」は、株式会社関係では19世紀のより古い時期のものであること、重要物産同業組合関係についてはほとんどを占めることがわかる。また、府立大阪博物場関係についても、より重要な簿冊にあたると思われる。なお、こうした原本資料以外に、複写・筆写したものや刊行物も含まれている。
大阪公大「大阪市史編纂資料」は、明治・大正期の大阪における、新たな近代的産業のみならず伝統的な諸産業を含め、会社の設立や同業組合の組織化といった、近代化の歴史を考える貴重な資料といえる。しかし、これまでほとんどその存在が知られておらず、研究利用がなされてこなかった。そこで今回、「大阪市史編纂資料」の一覧を公表し、広くその利用を図ることにする。なお、株式会社設立と重要物産同業組合については、別途、これらを抽出した細目録を作成した。