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解題:
𠮷沢コレクションには、主に講談・浪曲・映画など大衆芸能関係の一枚摺やチラシ、ポスターが多く収集されているが、そこには近代以降の地方の芝居番付も含まれている。その中から、松竹座(岐阜)の芝居番付を紹介する。岐阜県岐阜市白木町にあった松竹座は大正12年(1923)6月に開場した劇場で、こけら落としは初代中村鴈治郎らによる歌舞伎公演であった(『岐阜市史 通史編 近代』)。『続々京まち歴史散歩 写真集~明治・大正・昭和(20年まで)~』(2015年7月、京まちづくりの会)には、開場の頃の劇場前の写真(岐阜県歴史博物館蔵)が掲載されている。
①・②はその開場年の番付で、①は大正12年8月23日より26日、2代実川延若主演の歌舞伎『怪談乳房榎』の番付である。本作は早替り・本水などのケレンを見せ場とする延若の当たり役だが、その早替りの芸は、後に3代延若を経て、18代中村勘三郎、当代中村勘九郎へと継承され、現在に至っている。
②は、同年11月26日より29日まで、中村扇雀(後の2代鴈治郎)、片岡秀郎らが出演する「青年歌舞伎御目見得狂言」の興行で、歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』の通し上演である。扇雀は塩谷判官や早野勘平などを演じている。
③は、「大阪文楽座選抜若手人形大浄瑠璃」の番付で、文楽座若手による文楽地方巡業の際のもの。8月9・10日の記載のみ(掲載番組は初日の9日分)で年が記されていないが、一座の顔ぶれと演目が、昭和8年(1933)7月22から27日、神戸湊川松竹劇場「大阪文楽座人形浄瑠璃若手花形銷夏競演大会」(第一回)と一致し、その直後のものと推定される。この公演は現在刊行中の『義太夫年表 昭和篇』(和泉書院)にも収録されておらず、新出の番付である。
〔久堀裕朗〕