
解題:
神田伯龍講演、丸山平次郎速記。大正3年1月25日再版。此村欽英堂(大阪)発行。国立国会図書館デジタルコレクションにある明治43年版が初版か。表紙は同じ構図のようだが、国会版にある口絵を本書は欠く。本書にはカバーが付けられている(下画像1)。貸本屋によるカバーではなく、書肆によるものだろうか。カバーの内側には、表紙裏、後ろ表紙裏(下画像2)それぞれに、赤色の貸本屋帳票が貼られている。堺市の「あづま煙草店」とあるが、雑貨も売り、貸本業も営んでいたようである。表紙裏の帳票は上から筆で「山内」と訂正されている。内題ページには「雑貨貸本商 東榮商店」のゴム印や、「警察署許可済」「貸本同業組合同志会事務所」の印も押されている(下画像3)。
帳票に「大破損又は鼠喰紛失等は別に代価申受事」とあり、借りた本を傷つけたり失くしたら罰金、ということだが、本が傷つく代表的原因の一つが「鼠喰」であったわけである。
〔奥野久美子〕


